スーパープレイヤーに頼るのではなく、研修を通して『普通のプロ』を多数育成しチームワークで戦う意義

カーセブンでは、加盟店様に向けたさまざまな研修を用意し、加盟店様の事業運営が円滑に進むようあらゆる角度からバックアップしています。
研修にはどのようなものがあり、参加することでどのような力が身につくのか。
入社後、研修・CSグループでさまざまな研修を開発してきた石黒さんに話を伺いました。
メジャーリーガー養成ではなく、ちゃんとストライクを投げられるプレイヤーを育成
カーセブンが提供するさまざまな研修は、どのようなことを念頭に置いたプログラムですか
石黒:
メインの研修は、新規でご加盟いただいた店舗様や、店舗に新たに入られた方たちに向けたもの(オープン研修)になります。
本部が提供する研修というと、野球に例えるなら『時速150km/hのフォークボールを投げられる人材を養成する』と思われる方もいますが、弊社の研修はそのようなものではありません。そもそもメジャーリーグで活躍できるような人材は世の中に一握りしかいませんし、そこを目指すプログラムを開発しても、ほとんどの参加者は途中で挫折してしまうでしょう。
それよりも『80km/hのストレートでいいから確実にストライクが取れる人材』が大勢いたほうが、結果的に事業は成功すると考えています。
でも、最初はストライクを投げるのも難しいものです。確実にストライクを投げるためには、フォーム、ボールの握り方、リリースの仕方、体重移動など、いくつものプロセスがあります。
弊社の研修では、ゴールに向かうためのプロセスを細分化。チェックポイントを一つずつクリアした上で、次のプロセスに進みます。これにより確実に実力を身につけることができるようになります。
一つひとつ理解を深めていけるのは、参加者も安心感がありますね
石黒:
現場で働いている人には当たり前のことでも、初めてこの業界に入られた方にとってはわからないことがたくさんあります。
弊社は意識せずとも靴を正しく履きますが、まだ小さなお子さんだと左右を逆に履いてしまったりします。これは靴に左右があることを知らないから。靴には必ず右足用と左足用があること、そして右足用と左足用の見分け方がわかれば、左右を間違えることはなくなります。
弊社が展開している事業でも同じことが言えると考えています。オープン研修では、カーセブンの現場で活躍している人たちが当たり前のようにやっていることを新規加盟の店舗様や新しく入社された方も当たり前のこととしてできるようになることを目的としています。研修の進捗はカーセブンのスーパーバイザーを通して各店舗に共有するとともに、すでに現場で仕事をしている方の様子もスーパーバイザーが確認し、苦手としている部分をフォローする研修をおすすめしたりもしていますので、入社後のスキルアップにも役立てていただけます。
実践的なロールプレイングであらゆるお客様の心をつかめるように
数ある研修の中で、加盟店様から好評なのはどのようなものでしょうか
石黒:
一番人気があるのは、買取と販売のロールプレイング研修になります。この研修はご加盟直後の店舗様はもちろん、ご加盟から何年も経っている店舗様からもご好評いただいています。
弊社のロールプレイング研修はスーパーバイザーたちが現場で営業を担当していた時の「こういう商談で苦労した」「この一言で急に展開が変わった」というリアルな経験をベースに組み立てています。そしてお客様がどういう方なのか、というペルソナやお乗りの車を細かく設定することで、お客様との商談ですぐに役立てていただけるプログラムになっています。
ロールプレイング時のお客様のペルソナを細かく設定している理由は、お客様により売却や購入を決断してくださるポイントが異なるからです。逆に言えば、お客様をきちんと把握してお客様に刺さる形で営業すれば契約率をぐっと高めることができます。
ロールプレイング研修がスタートした当初は、参加者がお客様役と営業担当役を交互にやる形で進めていました。でもこの方法だとお客様役が必ずしも刺さるポイントを提示できるとは限りません。そこで、現在では私がお客様役を務め、さらに最初の座学であらかじめお客様の攻略ポイントを解説してからロールプレイングを行っています。このスタイルに変えたことで、より実践的なロールプレイングができるようになりました。
ロールプレイングは具体的にどのような内容なのでしょうか
石黒:
もっとも多いものだと弊社で90万円の査定をお出ししたお客様から「他社では100万円だった」と言われるケースです。他社のほうが高いからと諦めてしまえばそれまでですが、お客様の話を伺い、「ちなみに査定されたのはいつですか?」と聞いてみると「1ヵ月前」と言われることはよくあります。
この言葉をお客様から引き出せれば、「中古車相場は生き物で、1カ月経つと大きく変わります。1カ月前でしたら弊社もそのくらいの額をご提示できた」という話をすることができます。
販売のシーンでも予算オーバーの車を諦めきれないお客様にお支払い方法を確認した上で、「3年払いでしたら月々この金額ですが、5年払いにすることで月々の返済額をこのくらいに抑えることができます」とローンの説明をするとともにお客様の将来設計をお伺いし、ベストな提案を出す方法などを練習します。
ロールプレイングのパターンは何十通りもあります。最初は単純なところからスタートして、ロールプレイング終了後に今のポイントはどこだったか、どう対応することでお客様が前向きになれるかを解説します。そしてだんだん複数のポイントを織り交ぜたものに進み、さらに前に出てきたポイントの別パターンも出しながら最初に覚えたことが身についているかも確認していきます。
ロールプレイングの目的は、自分の中にお客様と話す時の引き出しを増やすことです。商談中のポイントにフォーカスしたロールプレイングに変更してから、参加者も「だったらこのケースではこういう方向にお客様を導くことでうまくいくのではないか」と自分たちで率先して考えている姿を見るようになりました。とてもいい傾向だと感じています。
研修はスタッフ全員が参加することで、より高い効果があります
研修に参加された方々の効果はどのような形で見えていますか
石黒:
非常にわかりやすいのはオープン研修でしょうね。オープン研修はご加盟いただいた際に「最低でもスタッフお一人は必ず参加してください」とお願いしていて、2人目からは各店舗様に別途費用をご負担いただいています。
店舗様によってはカーセブンに関わるスタッフ全員が参加されるケースもあるのですが、オープン3ヶ月後の実績を見ると、全員で研修を受けていただいた店舗様のほうがいい業績になるという結果が出ています。
この結果にはいくつかの理由があると思っています。
ひとつはスタッフの間ですぐに『共通言語』ができること。お一人の方に研修を受けていただいて内容を店舗で共有しても、それが共通言語になるまでには時間がかかります。でも全員が研修に参加して内容を理解することで、店舗で同じ目標に向かって業務ができるのです。
もう一つは研修のプログラムに組み入れているさまざまなテストが効いているのだと思います。
テストは弊社の『安心宣言』に関するもの、システムの使い方の実技テスト、そして研修の理解度を測るペーパーテストがあります。テストは丸一日かけて実施し、70%以上理解していたら合格になります。テスト結果は通信簿に落とし込みます。
オープン研修の後には直営店での研修に参加される方も多くいます。その場合、通信簿を直営店の店長に共有し、店長はそれを見ることで参加者の苦手な部分を集中的に研修したり、得意な部分をさらに伸ばすことができたりします。もちろん通信簿はスーパーバイザーにも共有して、店舗様にお邪魔した時に苦手なことを克服できているかなどを確認しています。
特にこのような方々に研修に参加してほしいというケースはありますか
石黒:
これまで車業界に携わられていて、新たにカーセブンを展開していただくことになった店舗様ですね。
異業種から参入される店舗様は新たな業界の知識を身につける目的もあり、積極的に研修にご参加いただいています。でも車業界で長年やられていた方だとこの世界のことはわかっているからと、お一人で参加されるケースが多いように思います。
もちろん車業界のことは十分わかっていらっしゃるということは弊社も理解していますが、カーセブンのやり方や考え方は一般的な車業界の常識とは異なります。そのため、研修を受けてその内容を身につけても、店舗に戻ると研修を受けていない方々のやり方――カーセブンとしてオープンする前の文化に戻ってしまうのではないかと感じています。
プロとしての技術技術を身につける研修や業界で勝ち残るための研修も用意
カーセブンには他にどのような研修があるかを教えてください
石黒:
ではこれまで紹介したロールプレイング研修、オープン研修に加え、代表的なものをいくつか紹介いたします。
■査定研修
カーセブンには異業種からご加盟いただく店舗様も多くいらっしゃいます。そのようなケースで絶対に必要になる研修が『査定研修』です。かつては別の会社に研修を依頼していたのですが、現在はカーセブン独自の内容に変更しています。
『査定研修』は座学と実習で構成しています。実習では査定時のポイントがわかりやすいようボディの鉄板を取り除いた車――理科室にある骨格模型のようなものですね――を用意し、どこを見ると車の状態がわかるか、修復歴はどのような形で現れるかなどを学んでいただきます。
また、弊社では査定情報を管理するために『insmart system (インスマートシステム、以下インスマ)』を導入しています。『査定研修』ではこのシステムの使い方も学んでいただきます。
■プライシング研修
『査定研修』はあくまで車の査定の仕方や見るべきポイントを学ぶものになります。では、査定した結果を査定価格にどのように落とし込むのか。これを学ぶのが『プライシング研修』になります。
『プライシング研修』は、オークションの相場検索ツールを使う実践的な研修になります。プライシングには過去の相場を見ながら将来の相場を予想することが欠かせないので、実践的な内容は多くの方にとって役立つものになるはずです。
また、同業でのしごと経験がある方でも査定は独自の方法でやっていたという方は多いものです。『プライシング研修』は弊社のプライシングセンターが監修したものなので、きちんと理論立てて査定を実施できるようになります。
■業界習熟研修
『オープン研修』の初日には、丸一日かけて業界の動向を理解していただく時間を設けています。そこでは中古車に関することだけでなく、昨今の世界情勢が我々の業界や広く世の中にどのような影響を与えているかもお話しています。
これは闇雲に商売をするのではなく、きちんと現在の情勢にあった経営をしていくことの大切さを理解してただくことを目的にしています。
■システム利用研修
先ほど名前を上げたインスマ以外にも、弊社ではバックヤードでいろいろなシステムを利用しています。これらは使いこなしていただくほど価値が高まるものになります。なので、加盟店の方々にきちんと使っていただくための研修をご用意しています。
この研修はシステムごとに2時間程度のWEB研修も用意していますので、お気軽に参加していただくことができます。
研修を通してチームプレイを磨くことがカーセブンのファンを増やす秘訣
研修でカーセブンのスタイルを身につけるのは大きな意義がありますね
石黒:
弊社の代表である井上は、常々「コンビニで安心しておにぎりを買えるように、安心して利用できる中古車チェーンを作りたい」と話しています。弊社が2015年に打ち出した『安心宣言』も、代表のこの思いを具現化したものです。
私が言うのも何ですが、中古車買取業界は一般的なビジネスの常識とはかけ離れたスタイルでビジネスを行うことが当たり前になっています。代表的なのがお客様から大切なお車を買い取ってもすぐに代金をお渡ししないことでしょう。
コンビニでおにぎりを買う時は、商品と引き換えに代金をいただくのが常識です。「食べて美味しかったらお金を払う」「1週間待ってお腹を壊さなかったらお金を払う」なんてことはありませんよね。でも買取業界ではこれに近いことを当たり前のように行っているのです。
なぜか。その理由は車がまだ贅沢品で、特別な存在だった頃から常識が変化していないからだと私は考えています。
今は一家に一台どころか、地域によっては一人一台車に乗っているのが当たり前の時代。車は特別な贅沢品ではなく生活必需品に変わりました。だとしたら、商慣習もそれに応じて変化させなければなりません。
最後に時代に合わせたやり方を取り入れるメリットを教えてください
石黒:
誤解を防ぐためにもお伝えしておきますが、1カ月前に他社で100万円の査定がついたお車を1カ月後に弊社で査定したら90万円しか査定を付けられなかったというのは現実にあることですし、それが中古車相場というものです。
でも「このお客様は中古車相場のことをあまり知らないだろうから50万円から始めてみよう」というは、買取業界の古い文化の中で実際にあったのは事実です。
弊社はすべてのお客様に対してきちんと正直に向き合うために弊社は『安心宣言』を打ち出しました。でもこれは弊社が特別なのではなく、買取業界自体がこのような方向に変わっていくのは必然だと感じています。だからこそ環境の変化に対しては常にアンテナを張っておく必要がある。弊社がご提供している研修はこのような考えを共有することも目的の一つになっています。
冒頭でお話したように、弊社の研修は150km/hのフォークボールを投げる人を育てるものではありません。そのような人は研修を受けなくてもご自身の才能でスーパープレイヤーに育っていくでしょう。
それよりも『80km/hのストレートでいいから確実にストライクが取れる人材』を育成し、チームプレイで勝負に挑む。これこそが弊社の研修の意義ですし、業績も良くなっていく秘訣です。そしてこれが結果的にカーセブンというブランドのファンが増えていく起爆剤になると私は考えています。