新車販売減少時代に先手を打つ!山梨の正規ディーラーがカーセブンFC加盟で描く未来

新車需要が伸び悩み、ディーラー経営の舵取りが難しくなりつつある今、山梨県に本社を置くホンダディーラーが中古車市場へ参入するべく「カーセブンFC」に加盟しました。正規ディーラーならではの信頼感を活かしつつ、中古車市場を開拓することにより、どのような新しい成長モデルを描いているのでしょうか。同社代表取締役社長・藤本博之様にFC加盟の背景と展望を伺います。
運営会社:ホンダ自動車販売株式会社
お客様も従業員も大切に――ホンダ車ディーラーの経営哲学
御社の事業内容と経営方針を教えてください。

藤本様:
当社はホンダの新車・中古車事業を展開しています。企業理念である「みんなに愛される会社作り」を掲げ、お客様はもちろん、従業員やそのご家族にも愛される企業を目指してきました。また、従業員の健康管理を経営戦略として捉え、積極的に実践していることから、「健康経営優良法人2024(大規模法人部門)」に認定されています。
当社が拠点を置く山梨県では、急速な人口減少が進行中です。しかし、交通の便があまり良くないこともあり、1人1台の自動車がほぼ必須となっており、需要が弱まることがあったとしても、なくなることはないでしょう。そのため、単に車を販売するだけではなく、住民の生活全体を支えるサポート体制の構築が重要だと認識しています。
たとえば、今後進むと予想されるEV(電気自動車)の普及に伴い、充電設備や電力供給といったインフラ面での課題が浮上すると思います。当社は、こうしたカーライフサポートに加え、保険や充電インフラ、電力、建設部隊などを含む「暮らしソリューション」としての取り組みを強化し、地域のみなさまを幅広くサポートする方針です。
「下取りだけでは間に合わない」中古車需要の拡大をどう捉えるか
新車を中心に販売してきた御社が、新たに中古車事業に注力する理由を教えてください。
藤本様:
近年、少子高齢化や可処分所得の減少、さらにEV化による車両価格の上昇など、さまざまな要因によって新車の需要は減少傾向にあります。新車価格が高騰する中、消費者にとって中古車の魅力はますます高まるでしょう。ディーラー網だけの下取り台数では将来的な需要に応えきれないと判断し、買取に力を入れることにしました。
当社では新車販売と中古車販売の台数をほぼ同等にすることを目標としています。現在は会社全体で830台を取り扱っており、今期は中古車販売台数を360台程度に引き上げ、最終的には新車と同じ台数まで伸ばす計画です。より多くのお客様に選んでいただける体制づくりを急いでいます。
中古車事業で新規顧客を獲得し、正規ディーラーの信頼感で包み込む

どのようにして中古車事業とのシナジーを創出するお考えですか。
藤本様:
当社は主にホンダ車を取り扱っているため、保証などの面で他社メーカーとの併売が難しいという課題がありました。そこで、ホンダ車の仕入れから販売までを一貫して行う「Honda認定中古車 U-Select」に、カーセブンで買取したホンダ車を任せ、それ以外のメーカー車についてはカーセブンで売る体制を整えることにしたのです。流通プロセス全体を管理することで、お客様との長期的な関係構築を目指しています。
お客様から下取り・買取した車を自社の販売ネットワークに回すことで、顧客管理が容易になります。クレジットや保険、整備・車検などのフォローアップにもつなげやすくなり、新規顧客の獲得はもちろん、既存顧客への対応力強化や整備・車検件数の増加にも貢献するわけです。
私たちは、車を販売して終わりではなく、「お客様を守る、そしてお客様を増やす」という姿勢で顧客管理を行っています。当社の強みは、ホンダのディーラーとして長年培ってきた信用と信頼です。「ディーラーが運営している中古車事業なら安心できる」と感じていただくことで、他社との差別化にもつながると期待しています。
数ある買取ブランドの中で、カーセブンを選んだ理由
パートナーとしてカーセブンを選んだ理由を教えてください。
藤本様:
当社の基本理念は「お客様を大切にする」という姿勢にあり、ずるい商売は一切せず、公明正大な対応を徹底してきました。だからこそ、カーセブンが掲げる「安心宣言」に強く共感しています。中古車購入時にお客様が抱く不安を払拭し、他社との差別化にもつながると感じているからです。
業界では、悪いニュースが取り沙汰されることもありますが、「安心宣言」が多くのお客様の心に響いているようです。安心宣言を通じて“お客様を守る”仕組みが確立され、お客様との信頼関係をさらに強固なものにし、長期的な関係構築を実現できると考えています。
また、カーセブンはシステムやサービスが充実している点も大きな魅力です。たとえば、顧客アンケートを効率的に集計する「e-answer」や、査定システム「insmart system」は、異業種から転職した女性スタッフ2名も問題なく使いこなせています。加えて、顧客情報や商談内容を一元管理できる「core-routine」は営業活動においても心強いサポート役になっています。
徹底した教育で不安を解消!カーセブンFCの手厚いサポート体制

カーセブンが提供している教育制度はいかがでしたか?
藤本様:
当社のカーセブン事業を任せている店長は、まずカーセブン本部で11日間の研修を受け、業界の実態やカーセブンのビジネスモデル、販売手法などを総合的に学びました。その際、中古車業界特有の課題や慣習を再確認し、「査定後の減額が当たり前」「保証内容が不透明」といったディーラーでは考えづらいケースが実際にあることに驚いたそうです。カーセブンが掲げる「安心宣言」の価値や意義を改めて実感できたと言います。
次に、店長は約1か月にわたり直営店で研修を受けました。出張査定に同行し、店長の業務を間近で見学するなど、実践的な学びの機会を得ました。店舗スタッフが積極的に声をかけてくれ、質問しやすい環境が整っていたため、多くの知識やスキルを吸収できたそうです。スタッフのみなさんが「安心宣言」を武器として活用し、他社よりわずかに安い価格でも商談を勝ち取っている様子を目の当たりにし、「お客様に寄り添い、信頼関係を築いていきたい」という気持ちを一層強くしたと言います。
さらに、オープン前からSV(スーパーバイザー)のサポートも受けました。オープン直前の1週間ほどはSVが店舗のレイアウトや集客準備を一緒に進めてくれ、開店後も定期的に訪問して助言をくれています。実際にSVのアドバイスをもとに行動すると、問い合わせ件数や販売数といった数字に明確な変化が出るそうです。たとえば、一括査定サイトへの未登録やネット掲載の遅れを指摘された際に対処したところ、問い合わせが増加しました。
コンビニ跡地を再生!渋滞が“集客力”に変わる出店ロケーション

カーセブン事業の人材選定と出店戦略について教えてください。
藤本様:
カーセブン事業を担当する人材を選ぶ際、「新車ディーラーの販売・接客ノウハウや顧客管理の文化」を活かしたいと思いました。特に、ホンダで培った“公明正大なサービス提供”の姿勢は、中古車ビジネスでも顧客の信頼獲得を後押しすると考えています。
一方、中途採用ではあえて未経験者を採用しました。経験者のノウハウは魅力的ですが、業界特有の悪い慣習が根付いている可能性も否定できません。そのため、ディーラー流の公正なサービスを一から学んでもらえる未経験者こそ、適任であると判断したのです。
店舗物件を選ぶ際には、立地の良さと将来性を重視しました。甲府市ではなく中巨摩郡(昭和町)を選んだのは、人口増加が見込まれるエリアであることに加え、甲府市内からのアクセスも良く、地域の中心地としてのポテンシャルが高いと判断したからです。
さらに、コンビニの居抜き物件を活用し、間口の広さや目の前で渋滞が発生する立地を上手に“逆張り”として捉えました。渋滞中にお店をじっくり確認してもらえますし、土日にも車の往来が多いという点から「目立ちやすく、入りやすい」物件を確保できたのは幸運でした。
低コストで早期回収!カーセブン事業の“投資効率”の魅力

投資回収の見通しと、今後の展望を教えてください。
藤本様:
約60坪ある店舗スペースを、比較的低コストで改装できた点も大きなメリットでした。コンビニの居抜き物件を活用し、大掛かりな基礎工事が不要だったため、投資額を大幅に抑えられたのです。ディーラーの新店舗を開設するには、3億円以上かかるケースも珍しくありませんが、カーセブン事業ならば約2,000万円程度から始められるため、圧倒的に投資が少なく、回収も早いと感じています。
また、ホンダ車に限らず、他メーカー車との比較検討に対応できる点も大きな強みです。新車販売が伸び悩む時代でも、さまざまな車種を扱うことで「入口を広げる」効果が期待できます。さらに、整備やアフターサービス、Keeperなどのコーティング事業を組み合わせ、多角的な収益を目指しています。
ディーラーで培った顧客情報管理や高水準のサービス品質を活かし、長期的にお客様を囲い込む仕組みづくりを行うことで、持続的な成長が見込めるはずです。今後は、当社の強みとカーセブン本部のサポートを掛け合わせて、さらなる相乗効果を狙っていきたいと考えています。